医学におけるX線CTのように,自然地震のデータを用いて,地球内部の地震波速度構造を3次元的に推定することが出来ます.
これを地震波速度トモグラフィと呼びます.東北日本弧下の地震波速度トモグラフィにより,
1) マントルウェッジ(沈み込んだプレートとその上のモホ面に挟まれたクサビ状の部分)には,
沈み込んだプレートにほぼ平行な低速度域が連続的に存在していて,これはプレートの沈み込みによって
誘発された二次対流の上昇流部分と考えられること,
|
2) その低速度域内では最大で数%の体積が部分的に溶けていること,
3) 第四紀(約200万年前以降)の火山および地形の高まりはマントルウェッジの低速度域の度合いが特に大きい領域の直上に分布すること
などを明らかにしました.
この観測事実は,マグマは多くの教科書に描かれているように火山直下のプレート境界付近からまっすぐ上昇するのではなく,
マントルウェッジの斜めの上昇流に沿って地殻まで運ばれることを示しています.
この上昇流こそが島弧マグマ生成・上昇の本質的な要因であると考えられます.
|